2018年重大進展―乳がん編
乳がんの分野のエキスパートが選んだ
2018年臨床における重大進展が
ネイチャーレビューで発表されました。
https://www.nature.com/articles/s41571-018-0165-1
一つ目:
リンパ節転移陰性でホルモン受容体陽性タイプ
早期乳癌患者、およびオンコタイプDX検査で
再発リスクが低リスクまたは中間リスクである
患者は、内分泌療法に追加して補助化学療法を
受けても有益にはならない。
条件に当てはまれば無駄な苦痛を避けることが
できる!ますます早期発見が重要になりますね。
注)ただし、50歳以下の女性で再発リスク
スコアが16~25の場合は化学療法の有益性が
ある程度あるということです。
完全に閉経に至っていない患者で再発リスクが
中間と高リスクのボーダーラインの患者は
ケモを受けるか受けないかの選択が難しい
ところなのですね。
https://www.carenet.com/news/general/hdn/46194
二つ目:
HER2陽性早期乳癌患者において、術前補助
化学療法とHER2標的治療を終了後の手術時に
乳房または腋窩リンパ節に浸潤性の残存病変が
認められた場合、T-DM1(トラスツズマブ・
エムタンシン)を用いてのさらなる治療は
非常に有用性がある。
T-DM1はモノクローナル抗体である
トラスツズマブとメイタンシン誘導体で
微小管阻害薬であるエムタンシン(DM1)を
結合させた抗体薬物複合体で、トラスツズマブ
のみで治療を続けた場合と比較すると、浸潤性
乳がんの再発および死亡のリスクを半減させる
という臨床試験の結果が出ています。
https://www.carenet.com/news/journal/carenet/47211
三つ目:
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤
である
🍎パルボシクリブ(イブランス)
🍊リボシクリブ(キスカリ)
🍓アベマシクリブ(ベージニオ)
のホルモン受容体陽性転移性乳がん患者に
おける有効性を検証した全ての主要第III相臨床
試験の結果が発表され、一部の試験では全生存
期間を延長することも示された。
私も現在パルボシクリブとレトロゾール
(フェマーラ)で治療中なので、薬の効き目は
とても気になるところです。内分泌療法に
感受性のある患者の場合、全生存期間の中央値
は39.7ヵ月、プラセボ群より10ヶ月長い。
ん〜、たったの10ヶ月かぁ。でも時間が
稼げる分、他の治療を受けられるチャンスも
増えるのよね 👊
https://www.carenet.com/news/journal/carenet/46954
https://oncolo.jp/news/180531y01
四つ目:
ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ
(PI3K)触媒ドメイン p110α(PIK3CA)遺伝子
に変異がある転移性乳がん患者において、
PI3K阻害剤アルペリシブは無増悪生存期間を
有意に改善し、その毒性も管理可能なレベル
であることが示された。
ホルモン受容体陽性乳がん患者の約40%が
PIK3CA変異を有すると言われています。
実は私もその一人!この遺伝子に変異があると
予後が悪いとも言われていますが、
アルペリシブを使うことで逆転できるように
なったのです。第III相のSOLAR-1試験では
閉経後のホルモン受容体陽性HER2陰性進行性
乳がん患者及びPIK3CA変異を有する患者に
おいてアルペリシブとフルベストラントを
併用することで無増悪生存期間が倍になる
ことが示されました。
https://oncolo.jp/news/181031k01
https://oncolo.jp/news/181228y03
https://www.cancerit.jp/61590.html
https://oncolo.jp/ct/alpelisib
五つ目:
先天的にBRCA1/2遺伝子に変異がある進行性
乳がん患者において、ポリアデノシン5’二リン
酸リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤
タラゾパリブを用いての治療は現在の
標準化学療法に比べて無増悪生存期間を
顕著に改善する。
第III相のEMBRACA試験の結果です。
無増悪生存期間中央値はタラゾパリブ群8.6ヶ月
に対して標準治療群5.6ヶ月。全生存期間中央値
はタラゾパリブ群22.3ヶ月に対して標準治療群
19.5ヶ月。
https://www.nejm.jp/abstract/vol379.p753
https://oncolo.jp/news/180828y01
https://www.cancerit.jp/59980.html
六つ目:
進行トリプルネガティブ乳がん患者において、
アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-
パクリタキセル)と抗PD-L1抗体である
アテゾリズマブの併用療法は無増悪生存期間
及び全生存期間を延長する。有効性はPD-L1が
陽性の患者で特に顕著である。
免疫療法は他のタイプの癌治療で大活躍中です
が、遂に乳がん治療でも一般化しそうですね。
https://www.carenet.com/news/journal/carenet/46965
https://www.carenet.com/news/general/carenet/46897
さて、2019年ではまたどんな進展が
あるのでしょうか。
いろんなゲームチェンジャー的な標的薬が
続々と出てくるのでしょうか。
遺伝子検査で変異プロファイルを出し、
それに合わせた薬のコンビネーションでの
治療というのも増えてくるのではないかと
思います。免疫療法の分野ももっともっと
進展してほしいです。